2006年04月29日
刻々と近づいて
フラメンコ発表会のフィナーレの練習が始まった。
セビジャーナス組みとブレリア組みと二種類。
私はブレリア。
集中して覚えなければと自分に渇を入れる。
衣装が配られたり、アクセサリーの準備が進んでくると、いよいよだという感じ。
去年、私は髪に付ける花を担当したが、今年はまかせっきりでお世話になるばかりだ。
「ありがとうございます、お忙しいのにお願いしまして」
バレッタを探してくれていた中級クラスの年配の仲間に更衣室で礼を言った。すると
「あなたの大変だった去年の気持ちが、今回すごくわかったわよ」
と私の肩を叩いた。
その言葉で私は忘れていたことを思い出した。
去年、私は指定された色の花を探し、あちらこちら歩きまわったがなかなか見つからず途方にくれた。
家の者にも協力してもらい車を走らせ店をはしごした。
まるまる一週間探し続け、もう駄目だ、と諦めたときに、なんとかそれらしき色が見つかった。
皆に配り終えた時は、責任が果たせたことに安堵感でいっぱいになった。
その当日の夜だった。
仲間の一人から電話が入った。
衣装の色と合わないのではないかという意見が数人から出たので、他の色に変えることと、もう手配はしてあるという報告だった。
私は口では優等生のような返事をして、静かに受話器を置いた。
電話のやりとりをそばで聞いていた家人が何を思ったか
「少しでもいい舞台にしようと思っているから変更になったんだろう?」
と、ぽつりと言った。
私はこの言葉で、我に返った。そして、救われた。
電話の主も同じことを言っていた。が、家人から指摘されると、本当にそうなんだ、と素直に聴く耳になれた。
この言葉がなかったら、私は自分の事しか考えない傲慢な人間になっていたかもしれない。
去年のことを思い出させてくれたこの仲間の人が
「同じ形がなかなかなくてねえ、二種類ぐらいになっても、かまわないかしらね?」
と問いかけてきた。
「大丈夫ですよ、色がだいたい似ていれば」
私の返事に、ふっくら顔の品の良い顔が、いっそう素敵な笑顔になった。
群舞は皆の力と労力、協調性が一体となり、それが何倍にも膨れ上がって踊りに跳ね返ってくる。
今年は去年よりいい踊りをしなければ..........。
そして来年は、今年より.......。