深夜の囁き。大いなる先輩達

2006年09月03日

太宰治に会えた気がして....。

「もなかの心の寄り道」

金曜日、一泊で久しぶりにゴルフコンペに参加した。

雨の中を河口湖の手前、都留で高速を降りる。

「空が少し明るくなったみたいですね」

 高速道路にのってから同乗者の人達を慰める意味で、同じせりふを私は懲りずに繰り返した。

しかし、本当は私の思いは違っていた。

街の中では少しの雨でも傘なしでは考えられないが、広い空間に入っていると気にならなかった。この頃は、陽に焼ける心配がないので、むしろ炎天下より歓迎していた。

さて、打ち上げ会で河口湖に移動し、親睦会を兼ねた宴会。

毎度のことながら、私が家人の代役として行っているという気持ちで今回も参加したのだが、毎回同じく楽しい時をすごさせてもらった。

翌日の土曜日は前日の雨模様とうってかわり、素晴らしい晴天。それぞれの車で来ているので朝食後に解散した。私達の車は四人話がまとまり寄り道してかえることにした。

絵が好きな人がいて、その人の為に美術館へ行った。

油絵や、日本画と、昔の着物が展示されていた。

しかし正直なところ、もう少し河口湖美術館所蔵の絵があってもいいのではないかと思った。富士山の日本画、油絵が数点のみ。そして富士山の写真がたくさん飾られていただけだ。もしかしたら他の美術館に貸し出し中なのだろうか。個数を考えるととても入場料が高いと思った。

まあ、それでも素晴らしい絵を観たのだから、それはそれでいいのだけど....。

写真を撮るが大好きだと言った人は河口湖のロープウエイで、昔話の「かちかちやま...」のお話で登場する山の頂上を希望した。

いいアイデアをだしてくれたと思う。

真正面に見える富士山と湖の景色が素晴らしかった。写真を撮るのに雲のかかりぐあいが大事なんだと真剣に説明していた。コンペの時も撮ってくれればいいのに、と思うのだが一度としてカメラを持ってきたことがない。わりとスコアの良し悪しにこだわる方だ。私だってフラメンコのときは必死だから同じともいえる。

私は、以前から行ってみたいと思っていた太宰治のゆかりの天下茶屋に行きたい旨を遠慮気味に希望した。

「いいじゃないですか」

 気持ちよく快諾してくれた。くねくねとしたカーブを三十分ほど上って行った。

「嬉ししいです。おかげでやっとこれました」

 風情のある建物で一階がお土産屋と食堂になっている。二階が、文学資料館になっていた。見学料無料。美術館より見応えがあり、おまけに無料なのですごく得した気分だった。

二階の窓から見る景色はとてつもなく見事。

こういう場所だから作品を書く意欲が出たうえ、いいものが書けたのだろう。

私は展示されている資料の細かい字を眼鏡をかけてゆっくり読んでいく。

河口湖から車で30分もかかるこの場所に、どうやってのぼってきたのだろう、バスはあったのか?自動車はあったのか?それとも馬車で来たのだろうか、?あれこれ頭をめぐらせた。

本当に今は楽な時代なんだとつくづく感じる。

同乗者の三人は、資料を順番に見ていたが、お茶を飲みたいと、階下の天下茶屋へ降りていってしまった。

一人残された私は、もう一度部屋を見回す。

小さな机が置かれている。

私は、その机に正座し、今から書き物をするような格好をしてみる。

ちょっと首をひねったり、腕組みをしたり。

なんだが、ひょろりとした太宰治が正面にいる気がしてきた。

 

 

 



ayame1999 at 01:31│心の寄り道 
深夜の囁き。大いなる先輩達