風が吹いている...。瓦礫の埋め立て地へ..第670編

2012年09月28日

「あはがり」の唄を聴いて...。

               「もなかのあれやこれや」
車のエンジンの音がする。
玄関のチャイムが鳴った。

思いがけない方が、やってきた。
白い発砲スチール箱を玄関に、ドンと置いてくれる。
蓋を開けると、氷の中に目が飛び出るほどの大きなお魚が入っていた。

「わ~、ありがとう」

というわけで、夕食は、食べきれないほどのお刺身がテーブルに並んだ。

「ぷりぷりして美味しいね~」
明日は、煮魚にしてもいいかな。
私は、切り分けて冷凍庫にしまったお魚を頭に浮かべた。

お魚をさばくとき、私の力では無理だった。
家族にやってもらう。
そばでじっと見ていた私。
大きなお魚も、切り身にすると、それほどの数にはならない。

「漁師さんは大変だなー」
荒波の中を漁船が漂っている光景が浮かんできた。

そういえば、つい数日前、三重県の漁船が、宮城県沖で貨物線と衝突して行方不明者を出したばかり。
若い人も犠牲になっている。

特に自分は家族の一員が気仙沼にいる事が関係しているからに違いない。
気仙沼港を利用している船が..と聞くと、ハッとしてしまう。

いつも思う事。
漁船の犠牲者はとても数が多い。
それにしては、ニュースで取り上げられるのが、他に比べて小さい。
捜索も、私の思い過ごしだろうか。
早めに打ち切られてしまう気がしている。

小さなアジやサンマ、サバなどの時は何も感じないのに、大きなお魚を前にすると、想いが違う。
命を感じてしまった。

有難くて
「いただきます」
と頭を下げてしまう。
届けてくれた方にはもちろんのこと、漁師さんにも、この日は頭を下げていたように思う。

さてさて、命といえば、NHKBSで「日本風土記」を見た。
小学校の修学旅行やその後も数回行ったことのある日光。
懐かしくて、集中して見てしまった。

最後にナレーターの声の向こう側から、唄が聴こえてきた。
民謡のような感じ。
「あー、何て懐かしい声なんだろう」

以前番組を見たときも、確か惹かれた声だったことを思い出す。

幾つもの山の頂から響き渡るような感じ。
ころころとコブシがきいているけれど、か細い声。
女性の声、という言葉は気取りすぎて合わない。
「おばさんの声」
がいい。
連山の頂きから、麓に住む人々の上に、雨の変わりに声を降らしているみたいだ。

最後に出た音楽の表示を私は見逃さなかった。

「あはがり」
という唄だと判った。
奄美の方言という事も。 

この世は神様から頂いたものだからいつまでも留まってはいられない...、生が終わるまで生きていきなさい。
世の中は 水車のようだからまためぐり会える..。
そんな意味を持っているようだ。

おごそかだ。
あの世とこの世の懸け橋になってくれるような唄声。

この唄を、この番組で流す事に決めた方に、
「すごいねー」
素晴らしい選曲に、拍手した。
もちろん唄っている方。
作詞の素晴らしさにも。


ayame1999 at 23:59│あれやこれや 
風が吹いている...。瓦礫の埋め立て地へ..第670編