ギターにたくし
2007年08月02日
いつかは....後編
「もなかのあれやこれや」
予定より早く代々木上原についた。しかし階段を降りていくと、すでにマンドリンの先生と仲間が私を待っていた。
3人が笑顔で迎えてくれる。私は急遽来ることが出来た仲間の腕を叩かんばかりに触れて、声をかける。
「よかったわねぇぇ、これて」
「ほんと、思いがけずによかったわ、私も一度は来てみたいと思っていたのよ」
眼鏡の中の彼女の目はいかにも楽しげだ。
古賀政男記念館に行こうと数日前先生からお話を頂いた。私はフラメンコのお教室から近いし、夜のレッスンまで時間があるので、かえって時間をつぶすのに好都合なので快諾。彼女は用事があるから、と行けないのを残念がった。
そして、当日の朝、私はもう一度誘ってみようと思った。
『もしかしたら、彼女の予定は変わったかも....』
私の感は結構あたるのだ。ピンポン、やっぱり大当たり。おかげで彼女も参加することに。
時折老人ホームやイベントで、古賀政男が作曲したものを演奏する。その関係もあって、前々からぜひいつか見学したいと思っていた場所だった。
駅からほんのわずかで着いてしまう。
昔は広大な土地にお屋敷が建っていたのだろう。今は瀟洒な建物になっていた。隣には日本音楽著作権協会の建物がある。ここも、もとは古賀政男の邸宅だったという。著作権協会の会長をやっていた方だから、土地を提供したのかもしれないな、などと私は勝手に想像してみる。
記念館の中には昔使っていた書斎や和室が移設されていた。写真で見ると、豪華なお屋敷。こんな家に住めるようになるのには、いつかはいつかは...と夢みて作曲に励んだに違いない。
移設された和室にあがる。昭和15年頃の映画が流され、古賀政男作曲の唄が流されている映像に私はしばらく釘付けとなってしまう。超美人の女優に男前の俳優さん。出演者の中にはまだ生きている人もいるだろう。でも、もうテレビや映画に出ていないと思う。
古賀政男も、お屋敷も、映画に映っている人も、過去の人となってしまった。でも、唄は当分の間は残っていくだろう。残せるものがある人は羨ましい。
美空ひばりも往年の有名な歌手も歌のレッスンに通ってきたというお屋敷。表札や重厚な机とソファー、、柱時計。ギターやマンドリンも陳列されている。
古いマンドリンを眺めていると、私は、亡くなった昔のマンドリン仲間を思い出した。愛用したマンドリンを棺の中に入れていた家族の姿が思い出される。あのとき、私達は最後のお別れに皆で演奏した。
みんなみんな、すべてが思い出となっていくばかり。
演歌の神様が住んでいた住居を訪ねたせいか、淋しい気持ちが押し寄せてきてしまう。
さてさて、代々木上原という駅に初めて降りたが、ジャズのお店のような、古いような、結構お洒落なお店が駅の近くに並んでいる素敵な場所。
私は遅い昼食をとり、仲間達はコーヒーとケーキでしばらく話に花が咲く。
しんみりしていた気持ちから、やっと普段の元気が戻ってくる。夜のレッスン頑張らねば...。