フラメンコ
2023年12月23日
クリスマスプレゼント
合わせても練習回数二度しかない日程で急遽依頼して下さった某団体の会にて
マンドリンクラブで演奏をする事になり、
私の頭の中は容量いっぱいになりました。
商社のメンバーがその後、明大と上智のメンバーが引っ張ってくれているクラブ。
今まで何十年弾いてきたといっても何となく合奏してきた自分は
「本当に自分はここにいてもいいのだろうか..」と
練習の度に自問してきたしまつです。
数年前に声をかけて頂きメンバーの一員になったものの
学生の頃から楽器と向き合ってきた仲間たちの間に
もまれ苦しむ私でした。
ギターは独りで楽しむため。
でも..マンドリンでの合奏は
「絶対に迷惑はかけられない!」
短い期間を言い訳に弱音を吐いてはいられません
深夜に弦の間にティッシュペーパーを挟み
音を落として毎晩猛練習。
「ああ難しい、ああ難しい」
終わってみれば、
「バンザイ」
楽な時間より苦しい時間のほうが
楽しさに。
「ああ、この感覚って...」
似ているなと思いました。
フラメンコです。
こんな速さなんて自分にはついていけない!
こんな難しい足なんて無理!
でもおかしいですね。
最後は喜びに。
すぐにできてしまうことは感動すら覚えませんね。
こんな自分になってしまった...と思うべきか?
こんな自分にやっとなれたと思うべきか?
答えは即答。
だから益々好きになるのでしょうね。
初めて行ったマリオットホテル。
何て素敵な会場だったでしょう。
素敵な方達や素敵な会場で演奏出来た年末。
今年はいろいろ辛いこともあったけど、
高価な品をもらうより、
何よりのクリスマスのプレゼントでした。
2023年08月16日
やっぱりこの言葉が好き
今年のフラメンコ新人公演2日間だけ行ってきました。
以前は3日間行き、最初から最後までギターやカンテに踊り
耳、目を総動員したものです。
あの頃が懐かしいです。
そう思うと審査員の先生方って大変だなー、
出場者の方達の重い全てを受けているんだもの、
と余計な事を考えたり...。
さて、録画済のテレビ番組を見ました。
昔の映像を放映。
戦争体験者のゲストの方が4人、
終戦に関して語っている映像でした。
何れも今は故人。
味方の兵隊は死に向かう最後は「お母さん..」
敵の若い兵隊は「ママ..」
と叫んだ、と。
終戦を迎えた戦地の病院で青酸カリを渡されたという女優さん。
広島原爆では真っ黒になった人達を荼毘に付す役目の
兵隊だった三代目江戸家猫八さん。
特攻隊の慰問で見た光景を話す他の女優さん。
なかでも、今は戦後何十年というけれど、戦前..かも、
と云った女優さんの言葉。
私は胸をグサリと刺されました。
「本当に今までは戦前だったんだ」
などと絶対になってほしくないですね。
今の私はウクライナ情勢のニュースは
悲惨さを見たくないからチャンネルを変える。
世界では餓死で一日5万人近くが亡くなっているのに、
大食い競争の番組をやるなんて!
と憤りながらもチャンネルを変えるだけ。
なんだか切ない気持ちになってしまいます。
さて、毎週我が家で小さな演奏会をやっていた仲間。
音楽だけでなくたくさんの事を教えて下さっていた
散歩仲間から大事な友人となった方。
「何が何でも舞台に行きますよ」
と私のフラメンコ発表会に足を運んでくださったあと、
病院のベッドへ。
今もあと少しの命と戦っています。
コロナ満床で入院が遅れ大変なことになった幼馴染もしかり..。
今の私は
不平不満。
とんでもないこと。
好きな言葉でもある
「一生懸命に」
当たり前すぎて、真面目くさい言葉と嫌がる人がいるけれど、
やっぱりこの先も胸にきざみましょう。
2023年06月03日
フラメンコと音、日本の音
あっという間に月日が過ぎてしまいます。
他の事の時は感ぜず。
特にフラメンコを追いかけていると..。
何故?
気がつくと3年なんてあっという間。
それを3回続けたら..。
ギャー。
今回、痛切に思い知ったことがあります。
「ああ私はフラメンコが大好きだけど、やっぱり体の中には日本の音が根付いているんだなあ」
と。
その証拠に今回観に行った日本舞踊。
「THE AZUMA Kabuki」
心が落ち着きゆったりと楽しめたのでした。
若い頃に邦楽に浸っていたせいでしょうか。
懐かしさを感じるのです。
さて、肝心のフラメンコ発表会。
人生と同じ。
後悔しないように.と向かいましたが無理ですね。
まあ、それが当然かも。
舞台間際にソロで踊る自分の姿をビデオに録る機会は何回もあったのに..。
怖くて出来ず。
あらばかり目につき、本番をとても迎えられません。
本当はちゃんとチェックしたほうがいいのに。
これからはもう少し気持ちの袋を大きくしなければ。
さあ過去はもう終わり。
これからは大好きなフラメンコの音。
無駄にはなっていないはずの日本の音。
互いに尊敬しながら歩んでいきたいと思いました。
もう、とっくのとっく、とっくに若くはないのだから大切に過ごさなければ。
2023年05月20日
情熱と静けさの音楽に酔いしれて
今日もお出かけ?
朝、家族に効かれる日々の昨今でした。
自分でも呆れるほど飛び回っていましたね。
5月21日に向け重ね続けたフラメンコの発表会の練習。
やっと明日迎えられます。
幸い天災もなく、命を脅かされる戦争の心配もなし。
そして高齢の家族の身体も何とか大丈夫そう。
大好きなことを遂げられる。
有難い事です。
わたしに出来る事は技術的は置いといて
一生懸命、一生懸命に精一杯踊ることです。
さて、昨夜終えたマンドリンの演奏会。
キャピタルホテルで◎ー◎リークラブのご招待で20名以上で演奏。
15曲程。
素晴らしい進行の方のお陰で、盛り上がりました。
素敵な会場。
ユーモアたっぷりの素晴らしいクラブの方々。
「ああ、こんなに美しい旋律の音楽があるのに..」
バラライカ担当の人が弾いた
「ともしび」
他にも美しい曲がたくさんあるロシア。
音楽や文学、素晴らしいものばかり。
それなのに...。
今ちょうど広島でG7。
地球なんてちっぽけな星なんだから、
世界が仲良くすればいいのに。
さて明日が終えたら、今度は別のマンドリンクラブ演奏会の進行役が
待っています。
こちらも一年前からの約束。
6月になったら、身体と精神的にも楽に。
でも大変なことを終えると、
振り返ると、いい思い出になるんですよね。
経験上。
2022年12月29日
振り返った道の先は...。
いろいろなことがあった気がする反面、
何もなかった気もしてくるのです。
実際はロシアがウクライナを攻撃したり、
更にコロナが蔓延したり、物騒な事件が起きたり。
やめましょうね、嫌な思い出は。
自分の中で喜びだった事はすぐに答えられます。
1、いの一番はフラメンコの踊りを続けられた事。
2.ギターお師匠様の作曲、作家の五木寛之作詞の唄を、
本番でお師匠様のギター伴奏で唄わせてもらえた事。
3.毎週家族の散歩仲間と我が家で小さな演奏会を続けられた事。
(全く独学のアコースティックギターは活躍しました。
そうだ!時々ウクレレも触らせてもらい弾けるようになったー)
4.宛名のないポストに入れない下手な絵手紙を描き続け、
300枚になった事。
5.百人一首を解説付きでノートに書き終えた事。
4番と5番は目を酷使しないよう夕食後30分以内で終わると決めて。
もっと嬉しかった事があるけれど...書ききれず。
悲しかった事、辛かったこと、嫌な気持ちなんて
どんどん記憶から消してゆくの得意です。
振り返ると、今年は特に自分を向上させてくれる人に出会え、
幸運だったな、と思うのです。
2022年09月05日
9年振り再開
日記なら、自分だけが読めればいいのではないか...と。
そしてTwitterの方にのみ、
短文を記し続けていました。
ブログ閉鎖後。
「あれから9年振りです。」
ブログを書き続けた年数は約8年。
閉鎖して9年間。
合わせて17年間。
長い年数ですね。
それだけ私の歳も、カサ上げしてしまいました。
あの頃はウィルスや身近に戦争を感じる日が来るなんて、
想像もしていなかったですね。
久し振りに自分のブログを見て、懐かしがったり。
ブログを続けた年数と同じくらい、
この先も好きなフラメンコ続けられるでしょうか。
そう思うと急に愛しい人に出会った気が。
ブログが
「元気にやっていたかい?」
私が
「ええ、何とかいろいろあったけど..」
とブログと抱き合い背中をポンポンと叩き合っている気さえしてきます。
という事で、Twitterに書ききれない事があった時は、
こちらにまた書きたいと想っています。
タイトル通り、いつまでもフラメンコを踊り続けられたら
どんなに幸せでしょう。
、
2009年08月30日
フラメンコライブ 「desnudo」
「もなかのフラメンコ」
フラメンコ新人公演が終わると、いよいよフラメンコライブdesnudoが始まった。
「どんな感じなのかなあぁぁ〜」
私が通っているフラメンコ教室の、すっかりシリーズとなったdesnudo。
今回は小島章司先生、そしてお弟子さん二人が加わり男性6人での踊り。
始まる前から、何かがいつもと違う。
空気がピント張りつめていると言ったらいいのだろうか...
判らない。
「どうしてかなあ..」
隣の人と言葉を交わしたあと、そんなことを考えながら踊りを想像していた。
その答えは納得。
即興で楽しく踊るフラメンコも最高。
タブラオでお酒を呑みながら、一緒に身体が動いてしまうフラメンコも好き。
大きな劇場で堪能するのも好き。
今回は、こじんまりとした、じっくりと集中して観ることが出来る場所。
始まる前から感じた空気。
それは何だったのかは、踊りが始まった瞬間に気付かせてくれた。
古き時代のフラメンコを若い世代に伝えてくれている、ということが、観ていて伝わってくる。
男達だけの...というめずらしさだけではなかったことが更に納得することが出来る。
全員で踊る力強さ。
繊細さ。
あやしげさ。
格調高さ。
なかなか、荘厳と感じられる踊り、そして男達一人一人の個性がほとばしる踊りを観れる瞬間は、そうざらにお目にはかかれない。
その貴重な瞬間の連続が一つの線になっている。
もう一度、
あの時の気持ちを味わいと思っている自分だ。
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
徳島、茨城の後は、再び東京に戻ってくるとのこと。そして公演日のチケットは完売となってしまいましたが、
9月3日の17時の追加公演決定との事。
時間がありましたら、お薦めです。
desnudo vol.3 Flamenco Live
「小島章司 魂の贈り物」会場:MUSICASA
(小田急線・千代田線「代々木上原駅」東口より徒歩2分)
チケットご予約:ARTE Y SOLERA(アルテ イ ソレラ)のみ。
特別ゲスト:小島章司
出演:佐藤浩希
矢野吉峰・末木三四郎
(鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団)
関 晴光・松田知也
(小島章司フラメンコ舞踊団)
カンテ:マヌエル・デ・ラ・マレーナ、アギラール・デ・ヘレス
ギター:マレーナ・イーホ、
斎藤 誠(9/2を除く)、
フェルミン・ケロル(9/2のみ)
全席自由4,000円
2009年08月23日
2009年フラメンコ新人公演
「もなかのフラメンコ」
一日目、2日目を見終え、最後は日曜日を残すのみとなった。
この2日間は前の方で観れた。
舞台全体を見渡せる距離から観るのも大事。でも、あるていど表情も判る距離だと益々楽しめる。
というわけで、二日目は一時間半前から並ぶことに..。
「早すぎたかナー」とんでもない。
すでに来ていた人もいた。 建物の中だから、座って壁に寄りかかり本を読んでいる人や、足を伸ばして座っている人と様々。
結局、すぐにやってきた仲間も加わり、横に三人膝を抱えて座った。
「ねえ、この時間もったいないね、勉強しようか...」
踊りの教室で、ほんの少しの振り付けと一緒に教えてもらったカンテのレトラを思い出した。
三行だけでも、いやいや二行だけでスラスラと言えるようにしよう。 三人で声に出さずも唇だけ早口言葉のように動かし続けた。
「何だか、顔面体操みたいね」
鏡がなくてよかった。両隣の仲間の顔をのぞき込み笑いたくなってしまう。
並んでいる人は後ろに続いているから、私達の背中しか見えない。
これ幸いと何回も口を大きく開いて繰り返しているので、すっかりアゴが疲れてしまった。
右隣の仲間は、顔面神経痛のように動かし続けているのが疲れたようだ。
バッグから本を取り出し読み始めた。
私も借りた本で、もう少しで読み終える本がある。
桐野夏生「in」
女の怖さをとても上手に描く作家の本だ。
エゴだけが感じられ、思いやりや無償の愛がみじんも私には読み取れない本。
だからこそ、人間の本質を描いているようで面白いともいえる。
「ここで読み終えてしまおうか...、イヤ、やっぱりよそう」
雑念はあまり脳に残しておきたくない。
「数分の踊りの影にはどれほどの練習量があったのだろうか...」
「いったい何十回、何百回の心の葛藤を乗り越えてきたのだろうか...」
出演する人も真剣なのだから、あまりインパクトが強いストーリーは読まない方がいい。
二行の体操はおしまいにし、私は左の仲間と楽しくお喋り。
係の人がやってきた。いよいよ開場だ。
明日は用事があるから一時間ほど遅刻してしまうけれど、駆けつけ、舞台に視線を向けさせてもらおう。
観る側も結構あとになると思い出に残るものなのだ。
[VOON] らしさ...。
2009年05月03日
鼻息荒く...。
「もなかのフラメンコ」
土曜日のフラメンコレッスンの折、先生より幾つかの注意の中で、呼吸についての説明もあった。
「ああ、なんて偶然なんだろう」
私は話をききながら、この一週間を振り返っていた。
先週の土曜日、フラメンコ教室の舞踊団の方が踊るフラメンコライブを観るために赤坂に向かった私。
「雨が強くなるぞ、風だって出てくるらしいぞ」
きっと寝込んだばかりの私だったのを心配してくれたのだろう。
我が家の年長さんが前日の天気予報をみたときから、何回も脅かしにかかった。でも、その言葉には負けずにふりきって傘をさした。
間近で観る踊り。
リズミカルなパルマとハレオの声。
『ああ、やっぱり来てよかったな』
踊り、パルマ、ギターの方の表取り、裏取り、という感覚ではなく、呼吸を感じる。
そして翌日のマンドリン練習後の講義でのことだった。
「最初に演奏を始める時の大事なことはなんだと思いますか?....」
声楽家の女性の方が私達に問いかけた。
「息を合わせるということですか?」
誰かが応えた。
「そうですね。最初に指揮者の方が大きく息を吸いますよね。そして演奏する方達も、一緒に...」
女性は流暢なイタリア語を交えながら、ほかにも楽しく話を続けた。
この呼吸。
前夜の赤坂のお店に出演していた方達の時も、強く感じたことだったので、私は興味深く耳を傾けた。
しかし、待てよ.....。
頭の中が忙しく回った。
マンドリンサークルでも、踊りのレッスンの中でも、いやいや、カンテでも、これまで呼吸の大事さは言われてきたことだ!
悲しいかな。
すっかり忘れていたのか。
いやいや、ポジティブに考えよう。
百回聴いても、その時の自分によって理解することが違う。百回なんでいわず、
『千回目で、はじめて気がつく私かも』
三人ずつ、スタジオを縦に使って、順番に短い振り付けを踊っていく。最後は鏡を正面にしてその場で踊った。
緊張のあまり息を止めては行けないのだ。大事に息を吸って、大切にはいて、.。
私は鏡に自分の姿を見ながら、おもいっきり息を吸う。
ちょっと鼻息が荒かったかもしれない。
4月25日土曜日、お教室の舞踊団の方、講師の方々が出演しました。大きな舞台もいいけれど、間近で満喫出来るお店で、味わうのもいいですね。
贅沢な時間でした。
場所 : ノーベンバーイレブンス
踊り : 東陽子、 工藤朋子、 末木三四郎
パルマ : 矢野吉峰、 中根信由
ギター : 斉藤 誠
2009年04月17日
2009年04月14日
続編 時計の針
「もなかのフラメンコ」
[VOON] 二つの踊り
ARTE Y SORERA「鍵田真由美.佐藤浩希フラメンコ教室」発表会。
4月11日土曜日を終着駅として、走り続けてきた私。
早めに楽屋入りすると、まずは無事にこの日を迎え到着する事が出来たことにほっとした。
家族が元気でいてくれたこと、心を惑わすトラブルもなかったから踊りに専念することが出来る。
若い頃には考えもしなかったことが、ありがたく感じる。
髪を整え、化粧を済ます。
「手あいてるかしら?」
周囲の仲間達は普段と違う濃い化粧でどんどん変身していく。仲間の髪の毛を結びあったり、きれいな色の口紅を借りたり。
楽屋は華やかになっていく。
付けマツゲだけ残した私は、鏡の中の自分をじっと見つめた。そして問いかけた。
『ガロティンの踊りで、帽子を落としたらどうしようか...。』
『ソロで踊るバンベーラのとき、振り付けを忘れて途中でとまってしまったら何処から踊ればいいのだろう...。』
頭が真っ白になりオロオロとしている自分の姿が浮かんできた。
ギターやカンテさん、そしてパルマで応援してくれている先生達の唖然としている顔まで浮かびあがってきてしまう。
私は首をふりマイナス思考の想像を振り払おうとする。しかし頭から離れてくれない。
『カラコレスの踊りで、アバニコを絶対に落とさない方法はないかなあ...』
大きな扇子のようなアバニコ。開いた時にバサリと舞台に落ちてしまう音が聞こえた気がした。
『ミセスクラス中級の曲のとき、階段を上る時に転んだらどうしようか...』
唄って踊るミセス。今回はとても構成が凝っている。期待感もあるけれど不安もいっぱい。
そしてもっとも心配なことを思い出し想像すると肩がすくんだ。
前の晩のことだ。
ここ数年発表会前日は、ホテルに泊まることにしている私は、早めに荷物をホテルに置くと、オーチャードホールに向かった。
お教室の先生方や舞踊団の方々が出演する「おたがい様コンサート」を見に行ったのだ。
その時のベリーダンスと一緒に踊ったフラメンコの様子。もっと書きたいけれどここはぐっと堪えておくことにする。
そのコンサートの帰り、アレルギー鼻炎の私はくしゃみがとまらなかった。
ホテルに近づくと鼻に冷たいものが走った。
鼻血だ。
強いくしゃみだと鼻の中に刺激を与え粘膜を傷つけてしまうに違いない。
毎年ちょっと鼻をこすっただけで何回も鼻血が出てしまうのは、この時期に起きること。
『もしも、足を強く打ったら、その衝撃で鼻血が出てしまうかも...』
血を流しながらなんて。プロレスみたいだ。
私はリハーサル室で練習している時も、上半身になるべく響かないように、踊っていた。
でも、そのうちに気が変わる。
『もういいよ。鼻血が出たってかまいやしない』
いったん決めると、どんどん大胆になっていく。もしもの時は鼻の穴にふたをして踊ろう。
ティッシュを半分ちぎると胸の中にしのばせ、楽屋とリハーサル室を何回も往復した。
さて、舞台は無事に終了した。
毎年現れる舞台の魔物。
今回は現れていることに私は気付いていないけれど、魔物はとても意地悪をしていたかもしれない。
わかっていないだけで、そのせいで、ひどい失敗をしていることも考えられる。
でも、帽子もアバニコも私の手の中にあった。
舞台の真ん中で一人立ち止まることもなかった。
階段から落ちることもなく、舞台の上に上がれた。
お願いをしたのだから、お礼をしなければ...。
時計の針さん、よくぞ私を静かにしずかに舞台まで運んでくれましたね、
ありがとう。
急ブレーキをかけずに最後まで私を針から振り落とさずにいてくれましたね。
ありがとう。
あなたはまた来年の舞台に向けてチクタクと時を刻んでゆくのですね。
電池で動くあなた。
来年私を乗せてくれるときは、少しパワーを分けて下さいね。
チクタクチクタク...、
もう夜が明けてしまうけれど、おやすみなさい。
2009年04月08日
時計の針.....第385編
「もなかのフラメンコ」
[VOON] これからだけど....。
いよいよフラメンコ発表会、11日がやってくる。
スペインから来て下さったギター、カンテの方達も加わり、何回かの音あわせも入っている。
今年は群舞のほかにソロにも挑戦。
舞い上がり、撃沈したり、まあまあの出来だったり、そしてまたまた失敗したりと..。
でも、仲間に、失敗をいっぱいしておいた方がいいよ、と言われたのを励みに、落ち込まないようにしていこう。
といっても
「さあ、きょうの失敗は何かな」
などと呑気にしていたら、本番だった、などとならないようにしなければ...。
聴けば聴くほど好きになっていくソロの曲「バンベーラ」。
振り付けも大好きだ。
せっかく頂いた振り付けだもの、愛情をもって大切に踊りたい。
群舞も、ソロと同じ。
大勢で踊ったって一人で踊っている気持ちでしっかり踊らなければいけない。でも、一人で踊っているんじゃない。
構成を考えてくれた担当の先生の意図した通り、群舞の素晴らしさを表現するためには、相手を感じながら踊る必要がある。
群舞の醍醐味が出せるように..。
ソロ以上の難しさがある、と言っても過言ではない。
この群舞。曲数を絞ろうと試みたけれど、どうしても絞ることが出来なかった。
気の遠くなるような難しいことが少しずつ出来てくると喜びに変わっていった。
「ああ楽しいなあ。踊りたいよ。この踊りをおどりたいよ。ここまでずっと練習してきたんだもの。皆と一緒に踊りたいよ!」
集中心が散漫になるのでは..
曲によって出来映えのバラツキが出てしまうかも..
いろいろ悩んだ。
でも、自分の気持ちを抑えることは出来なかった。
毎年、3曲出演させてもらってきた。
振り付けに入る前から一生懸命通って受けてきたクラスだもの。曲が始まれば尚更踊りたくなる。
今年はソロが加わった。
私は「今回だけだ」と自分に強くいいきかし、4曲挑戦することをお願いした。
今、思うと、よく許してくれたと思う。
同じ曲数の人もいるけれど、皆、はちきれんばかりの若い方ばかりだ。
受けてきた全てを踊ると決めてからの私は、時間を工夫しながらフラメンコに関わる時間を作ってきたつもりだ。
何処まで平静な自分を保っていられるか心配だけど、時間は一時停止はしてくれない。
「愛しいフラメンコの時間。
時計の針が私をのせて運んでいってくれています。
お願いですから、静かに、静かに、私を乗せて行ってください。
お願いですから、けして急ブレーキなどかけて私を時計の針から落とさないで下さい。」
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
フラメンコを踊っていらっしゃる方、そして、踊っていなくても、興味のある方に観て頂けると、とても嬉しく存じます。
下記にご案内させて頂きます。
『鍵田真由美:佐藤浩希フラメンコ教室発表会』
カンテ: ホセ・ガルベス、マヌエル・デ・ラ・マレーナ
ギター: マレーナ・イーホ、 斎藤 誠
踊 り : 生徒一同
日時 4月11日土曜日
場所 メルパルクホール
開場17:30
開演18:00
前売り¥3,000 当日¥4,000
2009年03月31日
普通って何処ですか?
「もなかのカンテ」
月曜日遅刻してカンテレッスンへ。 急ぎの仕事が出来てしまったときは夜が明けるまでパソコンの前に座っているのが常。 フラメンコ教室もカンテも休みたくない私は必死になって集中。でも、そんな時に限って来客があり、中断するはめに。 結局、終わらなかった仕事をそのままにして、私はカンテ教室に向かったのだった。 心の中で 『ああ、練習が思うように出来ていないから、辛いなー。気力で唄いきるしかないな...』 重い腰をあげ先生の隣に座った。 心の中を見透かされているようで、どきどきした。 先生が○○○○を唄うのか?と私が大好きな曲を言ってくれた。それなのに真面目な顔で 「いいえ違います。アレグリアスお願いします」 と応えた。 横で、先生の肩が半分、グイっと前につんのめた気配を感じた。 前に並んでいる仲間がクスクス笑っている。 しまった! 『ああ、なんて機転がきかないんだろう..』 せっかく言ってくれたものを...。我が道を行く私を知っている仲間だから可笑しかったに違いない。 先生は私の声のキーにカポタスをはめ直してくれた。 そして、今度は、ゆっくりめにギターを弾いた方がいいのか、それとも早めに弾いた方がいいのか、と問いかけてくれた。 いろいろな唄い方があるから時々効いてくれる時があるのだ。 どっちにしようかなあ....。 一瞬迷ったけれど、俯いていた私は顔をしっかりあげる。 「はい...普通でいいでーす」 仲間が今度はのけぞるようにして、声に出して笑い出した。 「おもろいやんか」 しまった! 普通でいいです..なんて、まるで洋食か和食がいいかと問われて、 「どっちでもいいです」 「なんでもいいです」 「どうでもいいです」 と子供の回答みたいだ。 あえて尋ねてくれた意味を理解しなければならない。 『ああ、..いいなあ』 ギターに酔いしれ、そのまま聴いていたくなる。しかしそうはいかない。 唄い終わると最後の箇所を細かく注意してくれた。出来るまで根気よくその部分を教えてくれる。 『ああ、先週もその前も注意された所だなあ』 心の中では、直っていないことに申し訳なくてならなかった。それなのに口から出た言葉は 「ほら、きっと、ゆっくりの方を選んだからボロが出たんですよ」 またもや仲間がのけぞった。 その様子で初めて気付く私。 何ということを言う自分なのだろう。 ああヤダヤダ...。 さて、今日は出来上がった書類を持って横浜の馬車道まで行ってきた。 火曜日はミセスクラスがある日だけれど、たまたまクラスはすべて休みだったのでラッキー。 月曜日のカンテ教室での教訓をいかさなかければならない。 けして失礼な言い方はしないこと。 肝に命じた。 おかげで打ち合わせ相手とスムーズに事が運んだ。 失敗も成功の道しるべ。
[VOON] 駅工事のおじさん
2009年03月22日
行かなくちゃ...!
「もなかのフラメンコ」
桜の開花宣言が出たけれど、まだ一斉にというわけではない。桜も、今か今かと、きっとジリジリしているに違いない。
さて、怒涛の数日間だった中で、まずは記憶が新しい木曜日のことから。
ミセスクラスが終わり、定番の店で仲間とコーヒーとサンドイッチで休憩を取った私。
「行かな~くちゃ..」
席を立ち、まだたくさん残っている他の人に声をかけ出口に向かった。
めずらしく女先生と入口で出会った。せっかく先生がいらしたのに入れ替わりに出てしまうなんて...。
「残念ですけどォー、お先に失礼しまーす」
会釈をし一人の仲間と一緒に店を出た。
「○○さん、○○さん..」
外に出て駅に向かい数歩進むと、女先生の声がする。
『あれ?何か用事でもあるのかな』
私は後戻りして店の入口に首をのばした。
「あっ.....あのう、お盆は持っていかないでくださいね。返していって下さいね」
女先生が申し訳なさそうに私を見た。
「えっ...!」
コーヒーカップとお皿、そしてお水がはいったグラスをのせたお盆を、私はしっかり持っていた。
「ギャー」
使用した器は棚に戻して店を出てくることになっているのに...。
「あなた、私も気付かなかったわよ、駅まで持って行っちゃうところだったじゃないの」
早く帰ると言い、私と一緒に店を出てきた仲間は足にボルトが入っている筋金入りの先輩。私を見て大笑いしていた。
金曜日。
「行かな~くちゃ」
メーク講習会にスタジオへ。何回も受けているけれど舞台化粧は難しい。
「行かなくちゃ」
土曜日はレッスンが朝九時からクラス同様の自習が始まることになっている。
土曜だけど、仕事の打ち合わせに我が家にやってくる人がいる。私はその仕事の書類を夜中までかかって整えた。
留守をするのでよけいにきちんとしておかねばならない。
「これとこれと、この件はちゃんと伝言しておいてね」
年長さんに伝達し、家を出た。
『あー、遅刻だな~』
しょんぼりスタジオに着くとやけに静かだ。怖々ドアを開けた。
男先生が顔を出した。
何回も伝えているのに...!と怒りたかったに違いない。でも
「四時からだよ。銀座でもいって遊んでいらっしゃい」
と、穏やかに。
「はーい」
あとで時間変更を手帳に書いておいたことを思い出したけれど手遅れだ。
「行かなくちゃ」
一応、言われたとおり銀座に行かなくては、と思った。でも、家の近くの商店街も銀座と書いてあったなー..と思いだす。
夕方再度スタジオへ。
無事に長い土曜が終わった。
明日は全員が集まってプログラム通りに踊ることになっている。
「いかな~くちゃ〜」
『クルリンコ 開花宣言 わが頭』
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
発表会に向けて頑張っています。
私も一生懸命踊ります。
フラメンコを踊っていらっしゃる方、そして、踊っていなくても、興味のある方、ぜひぜひ、おいで下さいませ。
下記にご案内させて頂きます。
日時 4月11日土曜日
場所 メルパルクホール
開場17:30
開演18:00
前売り¥3,000 当日¥4,000
出演 生徒一同
『鍵田真由美:佐藤浩希フラメンコ教室』
2009年03月15日
アントニオガデス舞踊団「アンダルシアの嵐」.....第380編
「もなかのフラメンコ」
日曜日の2時、地域の公民館でお祭りがあり20名でマンドリンを演奏してきた。
月に二回の合奏練習で利用させてもらっている場所。お礼の気持ちを込め、なるべく行事がある時は参加し演奏させてもらっている。
私は会場で売られている紙コップのコーヒーを飲みながら仲間の一人に話しかけた。
「あのね、昨日の昼間、アントニオガデス舞踊団の舞台を観てきたのよ。それがとっても素晴らしくてね...」
私はうっとりしていたに違いない。
「ふ〜ん、それでその舞踊団って外国の人?」
やけに落ち着いている話し方。
「もうイヤだなー、なんでこんな素晴らしいスペインの舞踊団を知らないの!」
私はふくれた。
でも、すぐに気を取り直す。
フラメンコに興味がなければ致し方のないことだ。
たとえフラメンコに興味がなくても、観てほしいなあというのが本音だけど。
その昨日の舞台『アンダルシアの嵐』
巨匠の描いた絵画を観ているようだった。
フラメンコだけに留まらないスケールの大きな踊り。作品の中に込められた深いメッセージ。
最後の佳境の場面に入ると私の頬に、細い、それはそれはとても細い涙の線が流れていった。
民衆の喜び。
民衆の呻き。
民衆の底力。
権力に対しての拳は大昔の物語ではない。
平和な時を平和とも感じることもなく刻んでいく今の自分。震えるほどの憤りを拳の中に閉じ込め、その手を振り上げている人々がいることを思い出させてくれる。
アントニオガデスの身体は土になり風になり自然に帰ったとしても(天に召されても、と書いたほうがいいのだろうか)作品の中で生きている。
絵画も小説も、いやいや芸術は、作り上げた人が没したあと、一旦は途絶えた時期があっても生きかえるもの。
すぐれた芸術は必ず誰かが蘇らせてくれるもの、と私は思っている。
舞台の終了後、仲間数人と近くの小さなカフェ店へ寄った。
『明日が最後の舞台。ああ、もう一度行きたいな〜。でも、公民館でマンドリンを弾くことになっているから無理だなあ..』
心の中で嘆いていた私。
「あれ...?」
何と店内に、出演していたエンリケパントーハさんがいるではないか。ゆっくりとアンケート用紙に記入してから劇場を出てきたから時間がかかっていたのかもしれない。
観てきたばかりの私達に、エンリケパントーハさんから手を差し伸べてくれ握手をしてくれた。
打ち合わせでもしているのだろうか、邪魔をしてはいけない。私達はすぐに別の席に座った。
すると今度はステラさんまで店に入ってきた。
カルメン役や監督さんの役を担っている方。やはり打ち合わせがあったようで別の人と額を寄せ合い話しだした。その真剣勝負の様子が私の席からよく見える。
私の心は躍った。
小さなお店の中。
こうして間近で、お会いできるなんて....。
明日も行きたいのに足を運べない私の願いを、まるで叶えてくれたように思えた。
さて、話は日曜日に戻す。
先ほどマンドリン演奏を終えて帰宅した私は柱時計に目をやる。
「今日で最後の舞台は、どんな感じだったのかなあ〜」
未練たっぷりに会場の様子を思い浮かべた私である。
『通じたよ 願いを口に 出さずとも』
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発表会に向けて最後の追い込みです。
私も一生懸命踊ります。
フラメンコを踊っていらっしゃる方、そして、踊っていなくても、興味のある方、ぜひぜひ、おいで下さいませ。
下記にご案内させて頂きます。
これから一ケ月の間にフラメンコ関係の投稿のさいは、ご案内させていただきますので、よろしくお願い致します。
日時 4月11日土曜日
場所 メルパルクホール
開場17:30
開演18:00
前売り¥3,000 当日¥4,000
出演 生徒一同
『鍵田真由美:佐藤浩希フラメンコ教室』